物理的に当然の破断との戦い!

今日は冷え込みの厳しい朝だった。

コロナ禍で発出されている、緊急事態宣言の効果が表れ、

新規感染者数は減少の傾向だが、医療体制は逼迫の状態に、

なんら変わりはない。医療従事者の負担軽減のためにも、

自分は感染防止対策を厳重に行い、自重・自粛の生活を続ける。

 

さて、ひとつ前の記事で、回転式シェーバー外刃について、

大雑把に述べたが、この記事では、少し細かく、絞りが成功

するまでの経緯を述べたいと思う。

 

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上記の写真は、絞る前のブランクの状態。

結構な数の、ヒゲが入る穴が開いている。

 

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 内側の髭が入る穴と外側の髭が入る穴の間に、

補強のビードが一段絞られている。

上手く絞らないと、この工程で破断が起きてしまう。

 

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 この状態から、七転八倒

素材が硬いステンレスで、薄いから伸び代は無いし、

試作を受注した以上、「出来ませんでした。」とは、

口が裂けても言えないし、納期はすぐそこに迫るし!

 

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腐らず、諦めず、ひたすら悩み苦しみ、幾度も金型を壊しちゃ

作り直しをした結果、遂に破断する箇所なく絞ることが出来た。

この製品に後加工を施し、必要な製品の形にしてサンプルを持参し、

客先に参上した時、客先の社長と直にお会いさせて頂いた際、

「貴方は弊社の救世主です!」そうお褒めの言葉を頂いた。

 

その後、実証実験用の試作を数千個作らせて頂き、良い結果が

得られたとのことで、量産用の順送型を発注して頂いた。

 その際、「ロイヤリティ契約書」を締結させて頂いた。

その内容を簡単に説明すると、

・外刃に関する他社の仕事はしないこと。

・上記の対価としてロイヤリティを支払うこと。

・金型のスペアー部品は契約先に発注すること。

 

そして順送型の製作に入ったのだが、2種類の外刃を造るのに、

2型発注して頂き、その2型で、2種類どちらの外刃も生産できるように!

とのご希望だったので、金型設計の段階から、とてもシビアになった。

しかも、ヒゲが入る穴の寸法が、最小部で0.2㎜ほどしかなかったし、

金型の材料は、指定された超鋼を使用するので、それはそれは、

神経をすり減らした。

又、パイロットミス検やストリッパークリアランスのセンサーを

入れるのは当たり前だが、ヒゲが入る穴を開けた次のステージに

カメラを入れ、プレスのストロークに合わせてシャッターを切り、

穴の欠損をチェックできるようにしたのは、当時、金型人生37年で

はじめてのことだったので、手探りの状態だった。

 

ほぼ寝ずに行っていた、金型設計の段階で納期が来てしまい、焦った。

どうしようかと考えている内に、焼けた石が胃袋に入っているかのように、

すっしりと思い痛みを連続的に感じ、「とうとう胃癌になったか?」

そう思い、会社近くの病院の門を叩いた。

症状を説明すると先生が「それは身体が病んでるのではなく、心だね!」

そう言って、薬を出してくれた。そして工場に帰り薬を飲んだら、即効

焼けた石が何処かに消えた。その副作用か?半端ではない睡魔に襲われた。

客先にも正直に事情を説明し、納期延長の許可を頂いた。

 

受注から半年、生みの苦しみで製作した金型が出来上がり、納品した。

客先で量産する実機にてトライアルを行った結果、一発でOK!

長い戦いは終わった。そしてそれから8年、スペアー金型は製作せず、

スペアー部品を交換しながら、現在も量産が行われており、そのメーカーの

回転式シェーバー全機種に、私が製作した順送型で量産した外刃が、

搭載されている。下の写真が2種類の外刃である。

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その後、東京海上キャピタル株式会社の、2016年6月3日付けの広報に、

「プレス加工の自動化ラインによるカッターの量産に世界で初めて成功した。」

そう記されたのを見た時は、とても誇りに思えた。

 

この外刃のプレス化を経験し、天面に複数の穴が開き、その穴が絞りの肩まで

到達していても、絞れる工法があると発見出来たことが、大きな財産となった。


次のブログでは、上記外刃とセットで回転式シェーバーの刃を形成する

「内刃」について書きたいと思っている!

 

追記。

毎日、コロナ禍による死者数が報道されている。心からご冥福を祈ります。

そして、それと同時に、医療従事者の方々に対し、深く感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

 

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